バイク乗りは、自らを追い込むようなハードなツーリングスケジュールを組むことがある。早朝から出発して深夜帰宅、何百キロもの道を一日で走り切るような過密なスケジュール……。普通の人なら敬遠しそうな厳しいスケジュールなのだが、バイク乗りはなぜかこれを好んでしまう傾向があるのだ。
この記事では、ハードスケジュールになってしまう原因と、効果的な回避策について考えてみた。
バイク乗りの世界では「走行距離の長さ」と「ツーリングの達成感」は、正比例すると考えられている。走行距離が長ければ長いほど、バイク乗りの満足度は高まるのだ。例えば、ツーリング後に仲間たちと集まった時、「今日何キロ走った?」という会話が必ずと言っていいほど出てくる。これは、クルマのドライバーの間ではあまり見られない会話だが、今日のツーリングの満足度を走行距離の長さで測ってしまうバイク乗りの間では、ツーリングの締めに欠かせない会話内容となっている。
また一部のバイク乗りの間では、走行距離が一種のステータスのような存在にもなっている。まれに「日帰りツーリングで、1500キロ走ったことがある」という猛者に出会うと、バイク乗りは無条件でそのライダーをリスペクトしてしまう。これは「1日当たりの走行距離が長ければ長いほど熟練ライダー」であると無意識的に感じてしまうからである。
バイク乗りが、毎回、走行距離を伸ばすようなキツいスケジュールを立ててしまうのは、こういったバイク乗りの志向が関係していたのだ。ちなみに、走行距離を伸ばすことがあまりにも優先されてしまい、観光地で観光しないというバイク乗りも非常に多い。
バイク乗りは、ふとした瞬間に「急に走りたくなる」という衝動に駆られるときが往々にしてある。これは様々な要因があるのだが、主に快適な天気や気候が、バイク乗りの「とにかく今すぐ走りたい!」という欲求を高めていると言われている。
このような天気や気候による走りたい欲求は、突然やってくるものであり、あらかじめ計画しておけるような種類のものではない。たとえ、1時間後に別の予定が入っていたとしても「30分くらいは走れるかな」という甘い見積もりが、バイク乗りのスケジュールをハードにしている。
あまりにも気持ちよすぎて1時間以上走ってしまい、予定に遅れて周囲から叱られてしまったという経験を持っているバイク乗りも案外多いとか。ちなみに、バイク乗り仲間が、突然「今から走ろうぜ!」という相手のスケジュールを全く無視した提案をよくするのも、この衝動が関係しているのだ。
バイク乗りは、近場のツーリングスポットを熟知しており、往復5~6時間程度で行って帰ってくることができるツーリングルートは何度も走っているのだ。そんなバイク乗りは新鮮さを求め「まだ走ったことのない道を走りたい」という思考に陥ってしまうことがある。
「もっと遠い場所へ」「次はさらに遠くへ」と、1日の走行距離をどんどん増やしていき、最終的には「適度な距離から逸脱した距離」、それこそ無理のあるスケジュールをたてなければ到底走れない距離に挑戦していくことになるのである。そんなバイク乗りの欲求が、より一層バイク乗りのスケジュールを過酷なものにしているのだ。
バイク乗りは、どれだけ仕事や家族サービス、その他の断れない予定によってスケジュールが埋め尽くされてしまっても、やはりバイクに乗りたいのだ。どんなに忙しくても、バイク乗りはその予定の合間を縫ってバイクに乗る。周囲からみたら休養をとるべき時間でも、バイクに乗る時間を作る努力だけは惜しまない彼らは、その時間をバイクに乗る時間にあててしまうのだ。そのようなバイクに対する深い愛情が、今日もバイク乗りのスケジュールをハードなものにしてしまっているのだ。
過密スケジュールを回避するために、時間の使い方を見直そう。目標と価値観を明確にし、優先順位をつけることが大切だ。例えば、仕事、家族との時間、バイクに乗る時間など、それぞれの優先順位を決めてスケジュールを立てよう。優先順位が明確になれば無駄な時間も減らせるし、本当に大切なことに時間を使えるようになる。
予定通りに進まないことを想定し、時間に余裕を持たせておくことで、トラブルが発生しても慌てずに済む。例えば、ツーリングでは目的地までの移動時間だけでなく、休憩時間や食事時間なども多めの時間を設定しよう。また、天候の変化や交通状況など、予想外の事態も考慮しておくことが大切だ。
仕事が忙しくなってしまった場合や、家族の予定が変更になった場合はバイクに乗る時間を調整する必要がある。定期的にスケジュールを見直すことで、最適なスケジュールを維持できる。
バイクのメンテナンスや荷物の積み込み、服装の準備など、事前に済ませておくべきことがたくさんある。特に長距離ツーリングの場合は、準備に数日かかることも。そのため、ツーリングの前には十分な準備期間を取っておこう。
ツーリングの行き先を決めるのも意外と大変だ。行きたい場所を調べたり、ルートを計画したり、宿泊先を探したりと、多くの手間が発生する。特に初めて行く場所は情報収集に時間が掛かるので、準備期間を長めに設定しよう。
ツーリングでは、帰りの時間をしっかりと計算しておこう。日帰りツーリングの場合、帰りの時間を見誤ると帰宅が夜遅くなってしまう。また長距離ツーリングの場合は、宿泊先の予約なども忘れずに済ませておくこと。
過密スケジュールによる睡眠不足や疲労の蓄積は、免疫力の低下や体調不良、集中力の低下や判断力の鈍化にもつながります。バイクの運転には常に集中力と判断力が求められるため、健康状態には注意が必要だ。
疲れた状態=睡眠不足や疲労が溜まっていると、反応速度や判断速度が遅くなり、突然の危険に対応することが難しくなる。十分な休息を取り、体調万全の状態で走行しよう。
常に時間に追われている状態は心身に大きな負担をかけ、ストレスの影響が大きくなる。イライラしたり、集中力が低下したり、睡眠の質が悪くなったりと、いいことは何もない。『バイクに乗ってストレス解消!』となるはずが、過密スケジュールのストレスを抱えていると効果も半減だ。
バイクライフをもっと楽しむためには、余裕を持ったスケジュールを立てることが重要だ。急に走りくなるという欲求に従うのも良いが、時間に追われることなく、自分のペースでツーリングを楽しめるように工夫をするのことが一番なのだ。前回のツーリングで長距離になりすぎた結果、時間が足りなかった場合は、次回のスケジュールには余裕を持たせるように調整してみよう。
また、ツーリング中に発生したトラブルがあれば、対策を予め検討しておくことが大切だ。また、バイクに乗りたい気持ちを周囲の家族や仲間に理解してもらうため、日ごろからコミュニケーションをとることも大切だ。
余裕を持ってバイクを楽しめるように、まずは改善できるポイントがないか確認してみよう。
2024-10-06T08:18:13Z