スポーツ万能で知られ、66歳の今も引き締まった肉体を誇る井手らっきょさん。しかし4年前、医師から告げられたのは「即入院」の通告でした。50歳で離婚、長く続く独り身がたたり、甘い飲料をガブ飲みし、深夜にラーメンをすする偏食生活。「痩せているから大丈夫」という過信の裏で、病魔は音もなく忍び寄っていました。絶望から一転、驚異の数値改善を成し遂げた自力での挑戦と、甘いものへの依存を克服した意外な「主治医の助言」とは。家族や自分の健康を守るための教訓を伺いました。
── かつては芸能界きってのスポーツ万能芸人として知られ、66歳の今も引き締まった体を維持しています。健康そのものに見えますが、4年前は「即入院」を告げられるほど深刻な糖尿病だったそうですね。
井手さん:糖尿病って「太っている人がなるもの」だと思っていたんです。ところが、別の病気で血液検査をした時に、医師から「すぐに3週間入院してください」と、告げられました。血糖値の平均を示すヘモグロビンA1cが、「正常値の6.0以下」に対して「10」を超えていたんです。自覚症状がまるでなかったのが一番怖かったです。
── そこまで数値が悪化した原因のひとつに、大の「甘党」が影響したとか。
井手さん:お酒はいっさい飲まない代わりに、昔から菓子パンやおまんじゅうが大好きで。おはぎなら1度に3個、ケーキも平気で2個くらい食べていました。とくに、市販の砂糖がたっぷり入ったカフェオレを毎日3、4本飲むのが日課になっていたんです。
運動中も「体にいいはず」と甘いスポーツドリンクを必要以上にガブ飲み。極めつけは深夜のラーメン。熊本で経営しているスナックの営業終わりにお酒も飲んでいないのになぜか「締めのラーメン」を食べていました。50歳で離婚をしてひとり暮らしが長くなり、食生活が完全に偏ってしまっていたんです。ただ、ポテトチップスなどのスナック菓子は一切食べませんし、お酒も飲まない。日常的に運動もしていたので、なぜか太らなかったんですよね。
──「即入院」をすすめられるほどの危険な状態でしたが、そこからすぐに入院されたのですか。
井手さん:お店の営業もあるし、何週間も入院するのは難しかったんです。だから先生に、「次の検診までに自分で食事制限も運動も徹底して頑張りますから!」と、先生に相談して許可をもらいました。
そこから生活習慣をあらため、飲み物は水かお茶のみに。ジムにも通い詰めて、走ったり筋トレしたり。自分を徹底的に追い込みました。
そのかいあって、50日後の再検査では数値が7.2まで下がり、先生からも「いったい何をしたんですか?」と驚かれました。そこからは投薬治療に切り替え、先生に褒めてもらえるほどの数値に落ち着いています。ただ、僕の場合はたまたま数値が下がりましたけど、本来はきちんと病院に通って、医師の指示に従って治療することが大事だと思います。僕も今は定期的に通院しながら、薬と食事管理でコントロールしています。
── 短期間でそこまで!でも、長年染みついた偏食習慣、とくに依存性のある甘いものを突然断ち切るのは、相当なストレスだったのでは?
井手さん:もちろん甘いものを断つのは地獄のようなストレスでした。先生にも「正直つらいです」と相談したところ、「おはぎも1個なら大丈夫ですよ」と、逃げ道を作ってくれて。「絶対にダメ」ではなく、「食べてもいい」と、選択肢ができた安心感から、ストレスを溜めすぎずに済みました。もし2個目のおはぎに手が出そうになったら「本当にそれでいいのか」と自分に問いかけながら、欲求を抑え込むよう意識してきましたね。
── ただ、そんな井手さんでも、長年やめられなかったものがあるとか。
井手さん:タバコですね。周りの芸人仲間が次々と禁煙していくなか、30年近くやめられなかったんです。でも、糖尿病が発覚する少し前に、39度の熱が出て、肺炎で入院したことがあって。レントゲンを撮ったら右の肺が真っ白でした。
ちょうど『たけし軍団40周年記念公演』の1か月前だったんですが、みんなに謝罪して、泣く泣く代役を立ててもらったんです。もう迷惑はかけられないと、それを機にきっぱりとタバコを断ちました。
ところが、退院が舞台初日だったので、座長の(つまみ)枝豆から「残り3日間、カーテンコールだけでも出られないか」と連絡が。(グレート)義太夫の前振りに合わせ、裸に獅子舞パンツ一丁で乱入し、どうにか笑いが取れました(笑)。
── 病み上がりで、裸に獅子舞パンツですか(笑)。さすがというか、なんというか…。
井手さん:軍団のみんなには「ずっとそんな恰好ばっかりしてるから病気になるんだよ」と、イジられましたけどね(笑)。もし今度50周年公演があるなら、次こそは万全の体調で臨みたいですね。
── 立て続けに病気を経験され、その後、健康に対する意識も変わったのでは?
井手さん:今はできるだけ自炊を心がけています。苦手な野菜も「健康のため」と言い聞かせながら食べるようにしたら、美味しく感じるようになって。体を気遣うのに、遅すぎることはきっとないんですよね。みなさんも自分や家族のために、定期的な検診は絶対に受けてほしいと伝えたいです。
…
今回、井手さんは徹底した生活改善で危機を脱しましたが、最も大きな教訓は「痩せ型で運動もしているから大丈夫」という過信の怖さでした。
皆さんの周りにも、「お酒を飲まないから」「太っていないから」という理由で、日々の過剰な甘いものや偏った食事をスルーしてしまっている人はいませんか?
「まだ大丈夫」という根拠のない安心感が、一番の健康リスクかもしれません。まずは自分や大切な家族の「無意識の習慣」を見直してみませんか?
取材・文:西尾英子 写真:井手らっきょ
2026-03-30T11:09:09Z