「忙しさ」を競い合う生活には戻らない! ベイエリア出身のわたしはこうしてクロアチアに移住した

  • アメリカのカリフォルニア州で生まれ育ったニアブ・コンノさんは、クロアチアの小さな海沿いの町に移住した。
  • 9時5時の仕事が健康に悪影響を及ぼし、自分には合わないとコンノさんは気付いたという。
  • 今ではクロアチアの「ポマロ(pomalo)」を実践している。これは「のんびり生きる」という意味だという。

※この記事は中小企業向けのソーシャルメディア・ストラテジスト兼コンテンツクリエイターで、クロアチアのマカルスカ在住のニアブ・コンノさんへの取材をもとに聞き書き、編集したものです。

わたしは9時5時の仕事に就きたいと思ったことはない。コロナ禍で9時5時の仕事を経験し、自分には無理だと気付いた。自宅で仕事をし、1日に2000歩も歩くことがない中、メンタルヘルスがこれまでにないくらい悪化した。友達と会う気にもなれず、旅行することもできなかった。

その後、わたしはクロアチアのスプリトとドブロブニクの間の海岸沿いの町、マカルスカに引っ越してきた。ここで世界の中小企業と仕事をしている —— 3つの大陸のクライアントとインスタグラムやTikTokの戦略を考えたり、コンテンツ制作に携わっている。最終的には中小企業の経営者を紹介したり、宣伝することが目標だ。彼らと協力して、オンライン空間に参入する手伝いをするのが好きだ。

今となっては、9時5時で働くことは考えられない。そんな暮らしにはもう戻れない。

「生きるために働く」アメリカに別れを告げて

わたしはカリフォルニア州のベイエリアで育った。友人の多くは大学へ進み、IT企業に就職した。わたしたちは懸命に働き、忙しくして、人生を楽しまないように教育されてきたのだと思う。ばったり知り合いと会って元気にしているか尋ねると、相手は「ああ、忙しかったよ」と答え、もう1人も「そうだよね、わたしもだよ」と言って、誰が一番忙しいかを競い合う。彼らはひたすら金曜日を待ちながら1週間を過ごし、プライベートも何もない。

アメリカ人の父とアイルランド人の母に育てられたわたしは、パスポートを2つ持っている。子どもの頃から家族でよく旅行をしたし、わたし自身も世界を見て回りたくて仕方なかった。13歳になる頃にはすでに、学校を卒業したらヨーロッパに移住したいと思い描いていた。

わたしが最初にイギリスのロンドンに移り住んだのは、2015年のことだ。これは良い足がかりだった。新しい環境の中で自分に挑戦するのは本当に楽しかったし、たくさんの人たちと出会ったことでわたしの心は開かれた。わたしたちは皆、この世界に興味津々だった。この年の夏、わたしはヨーロッパをあちこち旅した。クロアチアにも立ち寄り、また戻ってきたいと思っていた。翌年の夏、 わたしはマカルスカ・リビエラで仕事を見つけ、小さな家族経営のホステルで働いた。3カ月半クロアチアで暮らし、クロアチアの人々、文化、自然、食べ物にわたしは恋をした。ここにいると寛げた。

ただ、わたしはこの後、あるオーストラリア人男性と出会い、恋に落ち、彼と一緒にパースへ引っ越すことになった。そこで6年間、幸せに暮らしていた。

「休暇」が「大きな人生の決断」に

コロナ禍で9時5時の仕事をしていたわたしは、自分には人生がないような気がした。ほとんどの時間を家で仕事をして過ごしていた。身体も心も元気とは言えなかった。自分の今の暮らしに心から満足していなかったのだと思う。

2022年に入って国境が再び開かれると、わたしはすぐにクロアチア旅行を予約した。飛行機でスプリトまで行き、まっすぐマカルスカへ向かった。

3週間後、結婚生活は終わりを迎えた。久々にシングルになった。わたしは海外でひとりぼっちだった。何かの理由で自分の人生から物事が失われると、「どうしてわたしにこんなことが起こるのだろう?」と思うこともある。それでもわたしは毎日「人生はわたしのために起きているのであって、たまたまわたしに起きているのではない」と自分に言い聞かせ、そのおかげで多くのことを乗り越えてきた。

マカルスカの雰囲気やエネルギーにわたしはとても癒された。こうした人生の大きな変化を乗り越えるのに、ここはぴったりな場所だった。数カ月後、わたしはここにとどまることを決めた。ここに移住しよう! というよりは「ここから離れることはないかな」という感じだった。

「ポマロ」を受け入れて

海外で、リモートで自分のビジネスを経営することがどういうことなのか、もう一度見直す必要があった。週40時間労働には絶対に戻りたくない。戻らない。わたしはカフェで仕事をしたり、友人と一緒に仕事をするのが好きなのだ。スペインとポルトガルへ旅行に行って、そこで仕事をすることもできた。わたしは自分の時間を上手に管理できる。

わたしはよく歩いていた。家で仕事をしていて、デスクから離れられないということはもうなかった。体重も15キロ減って、ホルモンバランスも安定していた。ただ仕事に集中するのではなく、外に出かけたり、自分の人生を生きることを大事にしていた。すると、わたしの暮らしは本当に良くなり始めた。

デジタルノマドの暮らしや起業は、誰にでも合うものではない。自分でビジネスを始めるなら、強い自制心が必要だ。ただ、わたしはそのおかげでものすごく自由になったし、自分が"ボス"ならワーク・ライフ・バランスも自分で選べる。

わたしが住んでいるクロアチアには、「ポマロ」という言葉がある。これは「のんびり生きる」という意味だ。それがここで暮らすことの魅力だ。小さなことに感謝できる、ゆったりとしたペースの暮らしがここにはある。カリフォルニアでは、わたしの友人たちはいい車を買ったり、新しいマンションを手に入れるために昇進や昇給を手に入れようと頑張っている。もっと、もっと、もっとと追い求める暮らしだ。

ここでは友人を自宅に招いてコーヒーを飲むだけで幸せだし、それが1日のハイライトになることもある。

2023-11-07T22:35:15Z dg43tfdfdgfd