50代からうまくいく人が見据える「副業の考え方」 アルバイトやギグワークがすすめられない理由

仕事のこと、お金のこと、親のこと、子どものこと……。
50代の悩みはどれも切実です。体力や気力だって低下します。しかし、50代にはこれまで長年培ってきた知識や経験、スキルがあります。それらを駆使する方向にうまく「シフトチェンジ」すれば、まだまだ戦えます。輝けます。
『週末起業』の著者、藤井孝一氏は「自分がこれまでやってきたこと、身につけたことを過小評価すべきではない」と言います。リアルな50代の現状をふまえ、第二のキャリア、人生を充実させるための「シフトチェンジ戦略」について、新刊『50代がうまくいく人の戦略書』をもとに、3回にわたり紹介します(今回は3回目)。

時間と体力を切り売りする副業はNG

私が『週末起業』を書いた2000年代前半は、副業という概念はあったものの、実践する人はまだ多くいませんでした。

「週末起業をしたいけど、会社の就業規則で副業が禁止されている」

「やりたくても会社にバレるのが怖くて、どうしても一歩を踏み出せない」

当時はそんな話をさんざん聞きました。

しかし、今は国も副業を推奨する時代です。厚生労働省が定めた「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、企業の対応の基本的な考え方として「原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当である」とうたっています。

2018年に改訂されたモデル就業規則でも、「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削除し、「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」という条項を盛り込んでいます。

ただ、安易に副業のムーブメントに乗り、コンビニや飲食店の店員、ビル清掃などの時給払いのアルバイトをはじめたり、ウーバーイーツ配達員などに代表されるギグワーク(企業との雇用契約を結ばない、単発・短時間の働き方)に取り組んだりするのは、反対です。

アルバイトやギグワークをすれば、収入の足しにはなります。月数万円でも稼いで再雇用の収入減や年金生活の不安に備えたいという気持ちはわかります。

だからといって、50代で体力勝負の仕事をするのは無謀です。アルバイトで疲れ果て、本業の仕事に支障が出たら本末転倒です。体力のある若者でさえ、ギグワークで疲弊しているという話を聞くくらいなのです。

副業は「目的」ではなく「手段」である

私は、アルバイトやギグワークを否定しているわけではありません。アルバイトやギグワークで経験を積み、自分が本当にやりたいことにつなげるのだったら、やってみる価値はあります。

たとえば、ウーバーイーツの配達員をした経験を生かして、飲食店のコンサルティングをするというならわかります。

私自身、会社員時代に、コンサルタントとして独立するための準備、手段として、コンサルティング会社でアルバイトをしていたことがあります。具体的に何をしていたかというと、たとえばマーケティングの調査です。

スーパーで冷凍食品数を数えたり、カウンターを片手に朝から晩まで通行量調査を行なったりすることもありました。1日あたりの報酬は5000円程度。当時はお金を得ることよりも、コンサルタントに必要な知識と経験を身につけることに必死でした。

コンサルタントの知識、情報を得るために書籍代を稼ごうと書評を書き、報酬を得ていたこともあります。その頃は、Amazonが日本に進出したばかりで、認知度が低く、今のようにレビューが集まりませんでした。

そこでAmazonは書評を1本数千円で買い取ってくれました。私はAmazonでコンサルタントになるために必要な本を買い、書評を書き、そのお金で新しい本を購入していました。やがて書評の報酬はどんどん下がっていき、ご存じのように今では誰もが無料でレビューを書くようになっています。

私が書評を書いていたのは、勉強のためであり、文章力をつけるためです。当時の経験は、その後の執筆活動に大いに生かされました。もし、お金を稼ぐことだけを目的にひたすら書評を書くことに没頭していたら、無理がたたって体を壊していたに違いありません。

繰り返しますが、体力勝負の副業は命取りです。やるにしても期限を決めて、経験とスキルを身につけるということを目的にするべきだと思います。

「儲かる仕事」より「いい仕事」を追求する

個人で起業をするなら、お金よりもやりがいや楽しさを重視することが大切です。儲かる仕事は若い人に任せておけばいいのです。

では、なぜそれほど儲けなくていいのか。

それは、人生の後半生は前半ほどお金がかからないからです。とりあえず、65歳以降は年金がもらえます。いざとなれば年金に頼り、足りないぶんを働いて稼げば生きていけます。

少し前に「老後資金4000万円不足」というニュースが話題となりました。2019年に「老後資金2000万円不足」が大きく取り沙汰されましたが、最近の物価高をもとに専門家が計算したところ、不足額は4000万円になる可能性が出てきたというのです。

大前提として、4000万円不足がただちに当てはまると考えるのは早計です。生活スタイルによって家計の支出は異なりますし、物価上昇が予想通りになるのかという問題もあります。

そういった問題はいったん置いておいて、純粋に4000万円が不足するとしましょう。このとき65歳以上の夫婦は30年間、毎月11万円程度が不足する計算となります。

いずれ働けなくなるときがくるにしても、ある程度の預貯金を保有する家庭も多いはず。それを考えると、夫婦で毎月11万円を稼いでいくのは、困難な目標ではありません。

私の周りにも、1人で月10~20万円を稼ぐ人はいくらでもいます。

起業するなら「ブルーオーシャン」一択

やりがいを犠牲にしてまで儲けなくていいもう1つの理由は、大変だからです。

儲かる仕事は、顧客がたくさんいる仕事です。顧客がたくさんいるところでは、みんなが稼ごうとするので競争が激しくなります。50代が「レッドオーシャン」で若者に混じって勝ち抜こうとするのは困難です。

ましてや、これまでの本業とはまったく異なる分野で起業したりすると、ハンデ戦を強いられます。

前述したように、安易に飲食店に手を出すなどは危険な行為です。レッドオーシャンの上、本業で取り組む人が死にものぐるいでしのぎを削っているのですから。

起業するなら、ブルーオーシャンです。そこで欲をかかずにコツコツ稼ぐのがベストです。

40代までの私は「この仕事を受けたら、フィーが高い仕事はこなくなる。足元を見られたら困る」などと考え、安価なオファーを断っていました。

これは若い頃には必要な戦略でした。でも、今は金額にかかわらず「いい仕事」だと思えば、迷わずオファーを受けています。お金よりも人を育てたり、社会に貢献したりしたいという思いが強くなっているのです。

2025-01-21T07:38:50Z