どんなに疲れていても、自分や家族の夕食は手作りする。仕事で最高のパフォーマンスを発揮するため睡眠時間を9時間は確保する、など。とても素晴らしい心掛けですが、そうやって自分で立てた「ルール」に固執するあまり、ストレスを感じている人は多いのではないでしょうか?
誰にも迷惑が掛からないのにやめられない。やめると悪いことが起こる気がして怖い……そこまで心が強張ってしまうと、自力でほぐすのは至難の業でしょう。そんな時に手に取ってほしいのが、防災本で有名な草野かおるさんのコラム集『60歳からは「自分ファースト」で生きる。』です。
本書において、草野さんは人々に負担を強いている「常識」や「思い込み」の数々を、軽快な筆致で一刀両断。特に、自分ルールに固執して身動きが取れなくなっている人には、自分を客観視する良いきっかけとなり、読んだ後は心がスッと軽くなるでしょう。
もちろん、タイトルにあるような「60歳から」でなくてもしっかり心に響くはず。今回はそんな本書の一部を抜粋してお届けします!
毎日の食事の準備は面倒ですよね。特に家族全員が在宅していることが続くと「ご飯のことばかり考えている毎日」にうんざりする人もいるのではないでしょうか。「いつでも温かく健康的で美味しい食事」が出てくるのは、作る人の手間暇あってのことです。
「こだわり」を捨てるのも手です。料理は2日に一度にする。出来立てにこだわらない。食事は各自好きなタイミングで食べる。食事は基本セルフサービスで、各自洗う所までやる。食べたいものがあれば、各自買って来て食べる。
料理が負担になる前に、嫌いになる前に上手に手抜きをしましょう。
「イベント」をやめる。「面倒臭い」がやめ時の合図
自分が子供の頃、ケーキは特別なご馳走でした。我が子が小さかった頃は、イベントは欠かせませんでした、という人は多いはず。
でも生活も時代も変わっていきます。ひとり暮らしだったり、夫婦二人きりだったり。その度ごとに見直しましょう。モノのない時代の贈り物と、現代は異なります。世代が違う子どもたちには何をあげたらいいかもわかりません。
もし、面倒臭いと思ったらやめ時です。
年末はただでさえあわただしいのに、そんななかで、1年の汚れを全てキレイにするのは無理……という人も多いのではないでしょうか。
年末の大掃除は神社などで行われる「すす払い」が起源といわれています。
大掃除は各家庭、地方により、意味も習慣も異りますが、お正月を気持ち良く迎えるための準備と、いうところでしょう。昭和の時代は、畳を上げたり、障子を張り替えたりと、大掛かりな行事でした。
時代は変わりましたが、なんとなく、世間では大掃除しなきゃ、という空気があるのも確か。そんな「大掃除は面倒臭いけどなにかやっておきたい」という場合におすすめなのが玄関の掃除です。年末年始は来客も多い時期なので家の入り口をキレイにしておくと全体の印象も変わります。
「睡眠時間」にこだわらない。眠くなったら寝ればいい
睡眠に悩んでいる方は多く、睡眠導入剤を使っている方も多いそうです。
8時間寝なくては、12時には寝なくては……あれやこれやと自分のこだわりに固執する人もいます。
逆に、6時間寝れば充分という草野さん。その分昼間眠くなったら、30分ほど仮眠。長く寝れた日もあれば、短い睡眠時間の日もある。だけど、気にしません。よほどのことがない限り、不眠で悩みません。眠れなかったら、本を読んだり、ラジオを聞いたりその時間をまったり過ごします。それから、眠くなったら寝ればいいんです。
「自分ばかりが頑張っている」と思うと、イライラします。頑張りすぎている証拠です。
そんな時は、サボりましょう。
家族がいるなら「具合いが悪いので、部屋に籠ります」とか「サボる日につき、家事もお休み」とか宣言しても良いでしょう。
サボるには準備が必要です。溜った録画番組をチェックしましょう。ネットフリックスなど、サブスクに入っているのであればドラマを、全話分見るつもりでいましょう。やりたいゲームがあればダウンロードしておきましょう。出前を頼むなら、メニューを考えておきましょう。おやつは、我慢していたジャンクフードを用意しましょう。
封印していたささやかな悪いことを解放して「こんなにサボっていいのかなー」というくらい、サボりましょう。
著者プロフィール 草野かおる(くさの かおる)さん 出版社勤務を経て、イラストレーターとして活動。PTAや自治会を通して16年に渡り防災勉強会や防災訓練などで防災活動に関わったことを活かし、東日本大震災の数日後、役に立つ防災メモを4コマにしてブログで発信を始める。その年の防災の日である9月1日、これが書籍になり、50代にして著者デビュー。続けて非常食のアイデアをまとめた本や、100均グッズなどで備える、自宅避難に役立つ本も発売。2018年には防災士の資格を取得し、防災についての講演をおこなうほか、テレビやラジオの出演も。また、防災のほかにも、2016年以降は、伊豆ふるさと村に暮らす、秋山龍三先生(故人)を取材しまとめた食養生の本や、激せまキッチンでも簡単に料理できるレシピ本(『激せまキッチンで楽ウマごはん』(ぴあ))など、食に関する著書も刊行し、著作は共著も含め現在9冊にのぼる。
写真/Shutterstock
構成/さくま健太