コロナ禍が生み出した「新たな観光スタイル」 ワーケーション・マイクロツーリズム・ステイケーション、今後も残るのはどれだ?

コロナ禍で生まれた新スタイル

 観光産業は活況を取り戻しつつあるが、そうなると気になるのはコロナ禍で生まれた

【画像】えっ…! これが中国人観光客の「来日人数」です(計10枚)

「新たな観光スタイル」

の行方である。

 それは

・ワーケーション

・マイクロツーリズム

・ステイケーション

などだ。

 コロナ禍によって、それまで観光産業のターゲットであった大都市圏からの観光客やインバウンドの需要が消滅し、新しいビジネススキームを模索せざるを得なくなった結果、提唱された観光スタイルである。

ワーケーションの実施率「4.0%」

 観光地において特に取り組みが拡大したのはワーケーションである。ワーケーションとは「ワーク」と「バケーション」からなる造語で、観光地やリゾート地で仕事をしながら休暇をとる欧米発祥のワークスタイルだ。コロナ禍でのリモートワーク普及で改めて注目された。

 地方自治体では地域内のシェアオフィスやテレワーク対応の宿泊施設を紹介する専用サイトを新たに開設。どの程度の市場規模なのか不透明なまま、需要を見込んでワークスペースを増設する観光地の宿泊施設も見られた。

 ワーケーションの実施状況・希望を見ると、過去にワーケーションを実施した人は4.0%で、20歳代が最も多く6.8%だった。いずれの世代でもあまり普及はしていない。

 実施希望は29.9%で、20歳代では42.1%と半数近くになっている。2020年12月調査の全体での実施希望は34.3%であり、コロナが収束するにつれトーンダウしている感は否めない。

 希望するワーケーションの類型はブレジャー型が最も多い。ブレジャー型はコロナ以前から推進されているもので、コロナ禍で推進が期待されたのはリゾートワーク型である。

 ワーケーションには、

「遊びに行ってまで働きたくない」

「仕事を観光地に持ち込んだだけで遊べなかった」

という声もある。

 しかし、休憩時間に自然を散策し、アフター5は温泉やグルメでリフレッシュ、休日はすぐにリゾートを満喫できると考えれば、まとまった休暇をとれない人には魅力的かもしれない。設備投資をした施設や地域は、市場振興のために若い世代へわかりやすいイメージを伝えるプロモーション活動が必要といえる。

市場回復でマイクロツーリズムに影響

 マイクロツーリズムは、1時間~2時間圏の地元商圏を対象にした観光のことだ。

 コロナ禍で遠距離からの観光客が望めなくなり、観光業界や自治体で提唱された。マイクロツーリズムでは地域住民のきめ細かい観光視点が加わることによって、見落としがちだった新たな魅力が開拓されると考えられている。オーバーツーリズム(観光客の急増によるゴミ増加などの弊害)もいわれはじめ、地元への観光回帰が重要なことが強調された。

 地方自治体では県民や市民を対象に地元観光地の宿泊施設の費用補助を行ったり、クーポン券を配布したりして、地元住民の観光を喚起する施策を活発化させた。

 観光業界も足元の観光地を見直してもらうためのツアーや宿泊プランなどの取り組みを強化。それによって見過ごしがちだった地元観光地の良さを改めて知った住民も少なくない。

 しかし、市場が回復してきた今、マイクロツーリズムは聞かれない。観光産業は業績回復のために大都市圏・インバウンドを優先するし、利用者も遠方への旅行を優先するだろう。

 とはいえ、地元マーケットの重要性を提唱していただけに、需要が戻ったからといって断ち切れてしまうのは残念だ。改めて長期的な視点での取り組みを期待したい。

ステイケーションの可能性

 ステイケーションは「ステイ」と「バケーション」からなる造語だ。

 休暇を海外やリゾートなどへ旅行するのではなく、自宅や近場で過ごすという意味である。イギリスでブレグジット(EU離脱)が発表された直後、ポンドの価値が暴落した際に生まれた言葉であり、旅費を節約して浮いた予算を使って豪華なホテルで過ごしたりする。

 都市部ではインバウンドを見込んでホテル開発ラッシュとなっていたが、コロナによってその需要を一気に失った。ホテル業界では打開策として、働く女性がリフレッシュできるプランや、家族で室内キャンプ気分を楽しめるプランなど、さまざまなステイケーションを打ち出す。コロナ禍の夏休みには都市部のホテルでステイケーションする人が見られた。

 ホテル業界も国内観光客やインバウンドが回復して、そちらの需要にシフトしている。しかし、格式を重視して保守的といわれるホテルが

・ステイケーション

・リモートオフィス利用のデイユース

・サービスアパートメント

など、さまざまな新しい取り組みにチャレンジしたことは特筆される。消費者の反響もあり、サービスとして定着しているものもある。これらの取り組みによって消費者にホテルで過ごす時間を楽しむ意識が拡大した。

今後も尽きない懸念材料

 遠方への旅行に使用される旅客機や新幹線、長距離バスなどの広域交通機関もコロナの影響で旅客需要が激減し、同様に大きな打撃を受けた。

 これからも感染症だけでなく、異常気象、世界情勢などの懸念材料がある。コロナ禍で生まれた新たな取り組みを継承していきたいものだ。

2023-11-13T05:21:44Z dg43tfdfdgfd