「寝る・甘いものは逆効果」"戦略的休暇"の取り方

「ワーク・ライフ・バランスという言葉を捨てます」「睡眠時間2~4時間」。そう発言し、身を粉にして働く高市早苗首相の姿に、頼もしさを感じる人は少なくないかもしれません。
しかし、適切に休暇を取る人のほうが、長時間労働する人より生産性が高いということが、科学的にも明らかになっています。「休まず働くのは美徳」「休むと迷惑をかける」といった思い込みが、あなたと、あなたが率いるチームの成果を奪っているとしたら――? 
新著『戦略的休暇 休むほど成果が出る新しい働き方』を上梓した船見敏子氏が、休暇が生産性を高める理由、あなたが休めない要因、適切な休暇の取り方などについて、3回にわたってお届けします。

疲労度チェック

安心して休暇を取れる体質に変わり、休めるチームを作っても、肝心の休み方がわかっていなければ、有意義な休暇を過ごすことはできません。ここからは、「今の自分に合った」休暇の過ごし方、そして「戦略的な」休暇の取り方について考えていきましょう。

【チェック】あなたの疲労度は?

近年、「リカバリー経験」という概念が注目を集めています。仕事で蓄積されたストレスや疲労を、休息や余暇活動を通じて回復させる経験のことを指します。

心理的距離:仕事から物理的、心理的に離れること

リラックス:心身の活動量を低下させてくつろぐこと

熟達:余暇に自己啓発活動を行うこと

コントロール:余暇時間の使い方を自分で決められること

この4つの要素で、リカバリー経験は構成されます。

仕事から離れてリラックスし、好きなことを楽しむ。そんなリカバリー経験は、ストレスや身体的疲労を軽減し、ワーク・エンゲイジメントや仕事のパフォーマンスを向上させることが、研究によって明らかになっています。リカバリー経験こそが、戦略的休暇になるのです。

そのためにも、この4つの要素を取り入れ有意義な休暇を取りましょう。

はじめに実践したいのは、心理的距離とリラックスです。仕事のことを忘れ、リラックスして疲労を回復させる意識を高めましょう。

「寝る」「甘いもの」は逆効果

疲れたとき、多くの人は「とにかく寝る」、「甘いものを食べる」という行動を取りがちです。疲労が蓄積し、エネルギー不足になると、睡眠と糖分を欲しますから、それは自然な反応といえます。

しかし、丸一日寝たらよけいに疲れたとか、甘いものを食べて元気になった気がしたのに、そのあと倦怠感に襲われたという経験はないでしょうか? 実はこういった行動は逆効果なのです。

寝すぎると、体や脳のリズムが乱れます。甘いもので砂糖を大量に摂取すると、血糖値が急激に上昇し、その後急激に下がるため、低血糖状態に陥ります。それが、よけいに疲れる要因となってしまうのです。

疲労回復には、技術が必要です。そしてその技術は、疲労度合いによって、最適解が異なります。 

自分の疲労度を正確に把握し、その状態に合わせた最適なリフレッシュ法を選べるようになりましょう。

まずは、ここ1週間の疲労度をチェックしてみてください。以下の「疲労度チェック」の項目を読み、当てはまるものに「直感で」チェックをつけてみましょう。

【診断結果】

チェックが7~10個:疲労度が非常に高い状態です。心身ともにエネルギーが枯渇し、思考力や集中力も低下しているのではないでしょうか。バーンアウト寸前かもしれません。限界を超えて頑張り続けているのではないですか? まずは自分を優先し、休息を最優先に考えてください。

チェックが3~6個:疲労度は中程度の状態です。心身に影響が出始めているようですね。休みたい気持ちとまだ活動したい気持ちがせめぎ合っているのではないでしょうか。この段階で適切なケアをすることで、さらなる疲労の蓄積を防ぎ、パフォーマンスの低下を食い止めることができます。
チェックが0~2個:疲労度は低めです。心身ともに充実しており、高いエネルギーレベルを維持していることでしょう。この状態を保つためにも、定期的なセルフチェックと、疲労を未然に防ぐ戦略的休暇を取ることが重要です。

いかがでしたか?

多忙な日々の中で、自分の心身の状態を客観的に見つめる機会は少ないかもしれません。しかし、最高のパフォーマンスを発揮し続けるためには、自分を観察することは不可欠です。週に1度はこのチェックを行い、まずは頑張っているご自身をねぎらってください。

同時に、なぜ疲労が蓄積しているのか、あるかはなぜエネルギーを維持できているのかを振り返ることも大事です。そこには必ず、ストレスが関係しています。

ストレスとは、外部から加わる刺激全般を指します。業務の多忙さ、困難さ、職場の人間関係などの悩みなどのほか、昇進や結婚、家族の誕生といった喜ばしいできごとも、ストレス要因になります。

私たちは、これらのストレスに対応するため、日々、膨大なエネルギーを使っています。ストレスが複数重なったり、長期間にわたったりすると、まるでスマートフォンのバッテリーのようにエネルギーを急速に消耗してしまい、やがて枯渇してしまいます。

疲労度が高い状態のときは、まさにエネルギーを使い果たし、疲労困憊している状態といえます。スマートフォンも、バッテリーが切れれば動かなくなります。同様に私たちの心身も、エネルギーが枯渇すれば動けなくなってしまうのです。そして、うつ状態やうつ病に進行するリスクが高まります。

「いいかげん」でストレスをためない

ストレス・疲労をためこまないためには、ストレスの要因をなるべく減らすことが肝要です。強い責任感を持って業務やマネジメントに臨むのは素晴らしいことですが、頑張りすぎればバッテリー切れになります。それでは本末転倒です。

やらなくていいことはしない、力を抜いても問題ないことは手を抜くなど、「いいかげん(良い加減)」に働く姿勢こそが、あなた自身の健康、ひいてはリーダーシップを維持する秘訣です。

ある研究では、マネージャーのウェルビーイングが高いほど、メンバーのウェルビーイングが高くなるという結果が示されています。幸福学の創始者であるエド・ディーナー博士の研究では、ウェルビーイングが高い人は、生産性が31%高く、創造性は3倍高いということが明らかになっています。

戦略的に自分とメンバーを守る

あなたがいいかげんに、楽しく働く姿を見せ、ウェルビーイングが高い状態でいることで、メンバーのウェルビーイングもそれに引っ張られるように高まっていくはずです。そして、チーム全体の生産性、創造性が高まっていくことが期待できます。

いいかげんを実践するためには「ビジョン」と「目標」を常に意識することが大切です。

「この仕事は何のためにやっているのか? ビジョンに直結するのか?」を確認し、答えがNOなら潔く手放す勇気を持つのです。

長年の慣例であっても、今の時代には不要なことが、あなたの職場にもあるかもしれません。それを思い切ってやめることは、自分とメンバーを守るための戦略的な決断となります。

拙著『結局、いいかげんな人ほどうまくいく』(PHP研究所)では、私が出会った成功者たちのいいかげんなエピソードを紹介しています。なかには、長年の慣例を大胆に廃止した経営者の話など、驚くべきエピソードもあります。私が彼らから学んだのは、いいかげんでいたほうが、結果としてものごとが円滑に進むということです。

ものごとの本質を見極め、本当に大事なところに注力する。不要なことは手を抜いたり、思い切ってやめたりする。そんなメリハリのついた働き方をしているから、彼らは成果を出しているのです。彼らのように肩の力を抜き、よりスムーズにリーダーシップを発揮していただければ幸いです。

2025-12-01T00:37:35Z