月5万円の年金でやりくりするには? 知恵と工夫をちりばめたセンスあふれる節約生活をつづったブログが大好評の紫苑さん。食、おしゃれ、住まいを6回に分けてご紹介する5回目は「住まい」にフォーカス。築40年の中古の住まいを購入、DIYで家じゅうコツコツ変身させた経緯や、おしゃれに見せるインテリアのポイントをうかがいました。
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PROFILE
紫苑さん
しおん・1951年生まれ。
地方新聞社の東京支社勤務を経て、フリーランスのライターに。コロナ禍の2020年、月5万円の年金でやりくりする暮らしをつづったブログ「ひとり紫苑・プチプラ快適な日々を工夫」を開設。健康によい節約レシピ、おしゃれを生み出すリメイク術などが人気を集め、新聞、雑誌、テレビなどでも話題に。著書に『71歳、年金月5万円、あるもので工夫する楽しい節約生活』(大和書房)、『72歳ひとり暮らし、「年金月5万」が教えてくれたお金との向き合いかた40』。
ブログ「ひとり紫苑・プチプラ快適な日々を工夫」
https://blog.goo.ne.jp/sionnann
紫苑さんが現在の一戸建てを購入したのは、今から7年前。65歳のときのことでした。当時を振り返っていただくと——。
「仕事を続けながら、大好きな着物を買い込んだり、ときには株に手を出して何百万も損をしたりするような浪費的な暮らしをしていたのですが、60歳を過ぎると子どもたちが次つぎと独立。ひとり暮らしには広すぎる家賃24万円のタワマンから、家賃13万円の古い公団に引っ越したものの、見栄もあった当時は落ち込んだものです。今とは価値観も考え方もずいぶん違っていたのですね」
ようやく古い公団に移ったとはいえ、まだ年金も受給前。家賃や保険、社会保険料、光熱費などの固定費が20万、食費や日用品などの生活費が約10万、月々30万円以上の支払いでは赤字の月もしばしばありました。
「貯金がどんどん目減りしていくことに不安はつのるばかりでした。それまでに支払ってきた家賃の総額を計算してみると、なんと5600万円余。必要経費だとしても、もったいないですね。今後は高額な家賃負担を減らせるように、都内や駅の近くにこだわらずに物件を探してみたものの、なかなか見つかりません。地方への移住も考えましたが、自分が暮らしているイメージは湧いてきません」
そんなある日、近所を散歩しているときに、中古の一戸建てが売り出されるのを見つけました。その家が気になり、しばらく様子を見ていたそうです。
「築40年、10坪強の土地付きで、60平米ほどの2階建てです。当初の売り出し価格ではとても買えないと思っていましたが、数か月の間にだんだんと値下がり。子供たちも同行して内見し、狭くてもひとりなら住めるかな……と思案していると、売主から値引きの提案があって」
貯金の範囲でまかなえる金額だったことで、購入を決めました。中古住宅の価格は変動することがあり、そのタイミングを見逃さずに交渉・決断することもリーズナブルに手に入れるコツなのですね。
「家賃を払わずに住める“終の棲家”ができたことで肩の荷がおり、ホッとしました。それまでの広くて快適な公団暮らしに比べると手狭な感じで、窓から広がる気持ちのよい景観もないのは残念でしたが、屋根と壁があれば大丈夫、と」
その当時は今ほどの「節約マインド」はなかったそうですが、家賃の負担からの解放感は大きかったといいます。
マンションではなく一戸建てを現金で購入する決め手となったポイントは——。
●すぐ住める状態にリフォーム済みの物件だった。
●土地付きの一戸建てなら、家が壊れても土地は残り、売りやすい。自分が使用している間に家賃分が相殺できればOK。
●貯金の範囲内で、ローンを組まずに購入できた。フリーランスだと審査等の面で、ローンを借りるのが難しい。
●マンションは、毎月管理費と修繕積立金がかかり、築年数が増えるほど値上がりする。あまりにも管理費が高くなると、将来、マンションを売りにくくなる可能性も。
●一戸建は、エレベーターを使わずにすぐに外に出られ、気軽に散歩に行けるので、運動不足にならない。
「中古住宅は土台や構造がしっかりしていることが一番ですが、住宅診断士の資格をもつ大工さんに診断をお願いしたら、問題なしとのことでした。外壁のひび割れ補修と、床下のメンテナンスに必要な床下収納庫の設置も依頼して、合計5万円ですみました」
メリットがいっぱいの一戸建てでしたが、住み始めるといくつか不便なこともあったそうです。
「1階から2階へ何度も上り下りするのが大変でした。洗濯物を干したり、資料を移動したりするたびに、階段から転げ落ちたらどうしようと。でも、地域包括センターで紹介してもらった業者に格安で手すりをつけてもらい、慣れてきたら、トントンとリズミカルに上り下りする上下運動で、足腰の強化にもプラスになる! とポジティブにとらえられるようになりました」
新しいこの家に引っ越し、ひとり暮らしのサイズや使い勝手に合わせて、本や衣類、小物や食器などの持ち物を少しずつ整理してきた紫苑さん。コロナ禍で外出できなくなった頃から本格的にDIYで家じゅうのリメイクを始めました。
「ちょうど節約生活に取りかかった頃で、ステイホームの時間を利用して住まいも見直してみたのです。一人暮らしを始めた娘にDIYでテーブルや棚を作ったことがあるのですが、そのときの道具と100均で買った素材を使って、気になるところを模様替えしていきました」
娘さんのために作った棚をキッチンで生かしたり、洗面所に棚をつけ、カゴを入れてタオルや下着類を取り出しやすく整理したり。
キッチンは、ふつうの白い扉のキッチンでしたが、100均のブルー系のリメイクシートを張って、カントリー風のオリジナルなキッチンに変身させています。
「ちょっとちゃちな貼り方ですけど、惜しげなくチェンジできます。好みのイエロー系のシートで貼り換えようかと考え中です」
リビングの窓は、浴衣用の布をカーテンにしたり、知人からいただいた組子の障子枠を組み合わせて和風テイストにしたり、季節や気分に合わせて変えています。
玄関脇の窓も、ヒンヤリしたサッシの感触と味気なさが気になり、100均の木枠をつけて温もりのある雰囲気にするなど、何度もリニューアル。
「この夏は、リビングに使った残りの繊細な障子枠を設置して、リビングのテイストと合わせました」
撮影/橋本 哲
2023-11-20T21:20:52Z dg43tfdfdgfd